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AI時代の創作児童ポルノ問題【総合解説】
【解説者】 渡辺 真由子
漫画好きのメディア学者/ジャーナリスト。慶応大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程を経て現職。小学生時代は漫画家を志し、漫画研究会に所属。漫画家養成講座も受講するも、Gペンの扱いづらさに断念。『あさりちゃん』から『風と木の詩』、レディコミまで幅広く愛読。里中満智子氏のファン。卯年。
Twitter: @mayumania
連載『AI時代に子どもをどう守るか』
▶①<G7で日本だけ>「子どもへの性的虐待は娯楽」とする描写物が合法の国
▶②「表現の自由」と創作児童ポルノ
▶④創作児童ポルノによる、実在する子どもへの人権侵害とは?【現実の事例集】
創作児童ポルノ問題のポイント:
<国際社会との乖離>
▶子どもの性と国際人権 ~日本の性・暴力表現を「世界基準」へ~
(朝日新聞出版『AERA』インタビュー)
<作品のメッセージ性>
<性犯罪との関連性>
<世論調査>
▶子どもの性行為等を描いた漫画や絵の規制について
・規制の対象とすべきである……86.4%
・規制の対象とすべきでない……9.1%
・わからない……4.5%
(内閣府「有害情報に関する特別世論調査」、2007)
<科学的データの理解>
▶文部科学省調査
「青少年を取り巻くメディアと意識・行動に関する調査研究」(2017)
<調査目的>
国内外でのメディアによって表現された暴力・残虐表現等が青少年に与える影響に関する実証研究の動向について調査することを通じて、青少年の非行防止・健全育成に向けた取組のための基礎的な資料を得ることを目的とする。(報告書より)
<協力>
・性表現・性暴力表現に関する研究について(16頁)
・論文『性的有害情報に関する実証的研究の系譜 ―従来メディアからネットまで―』概要(35-36頁)
・ヒアリング(98-100頁)
▶▶詳細
<学会報告レジュメ 全文>
『メディアにおける「創作物の性表現」と「現実の性被害」との関係性
~児童買春・児童ポルノ禁止法改正案をめぐって』 渡辺真由子
<趣旨>
2013年6月、通常国会に提出されていた児童買春・児童ポルノ禁止法改正案は継続審議となることが決まった。改正案は、児童ポルノの所持を禁止する「単純所持の禁止」を導入することに加え、漫画やアニメ、CG等と性犯罪等との関連性を調査研究するよう政府に求めている。特に後者に関しては、出版界や一般ユーザーからの強い反発が見受けられる。
議論のポイントの一つは、例え性的虐待を描写した内容でも「実在しない人間を描く創作物を、規制対象とする必要があるのか」という点にあり、統一的見解は未だ定まっていない。
はたして、創作物であれば実在の被害者は生みださないのだろうか。本報告は「創作物の性表現」と「現実の性被害」との関係性に着目し、近年の性犯罪をめぐる複数の事例と、性表現の影響に関する研究理論やデータを検討し、創作物の性表現による弊害について考察する。
<発表内容>
1.児童買春・児童ポルノ禁止法改正案と創作物
2.創作物の性表現と現実の被害事例
(1)創作物による実在児童の権利侵害
(2)性犯罪における創作物の利用
3.性表現の影響に関する研究
(1)実写版ポルノグラフィ-の影響研究
(2)創作物の性表現の影響研究
(3)性表現の影響研究の限界
4.性表現規制の今後の方向性
▶▶「ネット時代の子どもの人権 ~人権の『国際規範』を考える~」 ゲスト講演(日本共生科学会、2018年)
▶▶An Analysis of the Japanese viewpoint on regulatory policy of virtual child pornography 和訳: 創作子どもポルノの規制政策における日本の視点 (International Telecommunications Society: Asia-Pacific Conference, June 2017 )
■研究発表の概要(日本語)
■発表スライド(英語)
<論文>
▶▶「子どもポルノをめぐる国際動向と人権」(『総務省情報通信政策研究レビュー』第10号、2015年)
-国際人権法の枠組み(欧州評議会によるサイバー犯罪条約や性的搾取・性的虐待子ども保護条約ほか)を概観したのみならず、それらにおける子どもポルノの位置付け、及び採用している子ども観や背後にある思想を明らかにした上で、「国際社会が日本の子どもポルノ政策に求める役割」を考察している。
▶▶『性的有害情報に関する実証的研究の系譜 ~従来メディアからネットまで』(情報通信学会誌103号)
-性的有害情報が与える影響研究に関して、海外国内の最新状況を概観(児童ポルノ・創作物含む)
■要旨
■本文