最新研究
「不同意性交」を防ぐ性教育とは?
~ メディアの性情報対策としてのリテラシー育成 ~
【 総合解説 】
同意のない性交、すなわち「不同意性交」が2023年、性犯罪の規定を見直す刑法改正により、犯罪化された。
法の改正はもちろん重要だが、「そもそも不同意性交を発生させないためには、どうすればいいか」も検討されねばならない。
不同意性交の背景には、SNSやAVといったメディアの性情報による影響があることが、私の取材・研究から明らかになってきた。
以下に詳細を紹介する。
<不同意性交とメディアをめぐる現状と対策>
▶「不同意性交」を防ぐメディア・リテラシー教育①現状編<メディアの性情報 うのみ>(新聞連載)
▶「不同意性交」を防ぐメディア・リテラシー教育②対策編<互いの性を尊重する教育を>(新聞連載)
<若者の性とメディア(共同通信連載)>
子どもにスマホを使わせるにあたり、保護者が特に心配をする点は何だろうか。
いわゆるアダルトサイトが発信する過激な性的有害情報を我が子が目にし、性に対する歪んだ価値観を身につけてしまうことを懸念する保護者は多い。
技術的な規制には限界がある。そこで必要になるのが「性情報リテラシー®」教育だ。
アダルトサイトを始めとするメディアが発信する性的有害情報にはどのような特徴があり、どんなテクニックを使って、子どもたちの性意識・性行動にどう影響を与えているのか?
「性的有害情報が青少年にもたらす影響」をまず大人が読み解き、理解することで、子どもが性情報を鵜呑みにせず自分の頭で判断出来るよう、導いていかねばならない。
私は過日、共同通信を介し複数の新聞紙上で、「若者の性とメディア」をめぐる現状と問題点、対策について取材・分析する連載を行なった。
読み逃したあなたにも一緒にこの問題を考えてもらうため、ここに公開しよう。
*「性情報リテラシー®」は、性情報リテラシー教育協会の登録商標
【「性情報リテラシー®」が必要なのは子どもだけではない】
あなたが過去の性的関係を振り返ったとき、
「そんなつもりじゃなかったのに、相手に強引に迫られた」
「相手の意図を誤解した行動をして、気まずくなった」
といった経験はないだろうか。
無理強いをする性行動は、「デートDV」の1つでもある。
取材を進めるなかで、大学生の女子たちが、日常的にデートDVの被害に遭っていることも明らかになった。
なぜ、性をめぐるコミュニケーションにはズレが生じてしまうのか。
あなた自身は、メディアの性情報をどのように利用してきたのか。
当事者としてもお読み頂きたい。
▶1.「性情報の氾濫のなかで」
▶2.「女子の性の目覚め」
▶4.「人数は多いほどいい?」
▶5.「露出服の意味」
▶6.「身近にあるデートDV」
▶8.「女性のノーはやっぱりノーか」
▶9.「演技ですか?」
▶10.「危うい避妊知識」
<メディアの性情報対策> 「世界基準の性教育」の必要性
性教育の世界基準とされるユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』と比較して、日本の性教育には決定的に欠けているものがある。メディアの「性情報」を読み解く、リテラシー能力の育成だ。
SNS時代の現在、「ネット上に氾濫する性情報や性的イメージは、多くの子ども・若者にとって最初の性教育になり得る」と国際ガイダンスは懸念し、性に関するメディア・リテラシー(性情報リテラシー®)教育を新たな課題として提唱している。
ところが、日本における生命(いのち)の安全教育ではなぜか、性情報リテラシー®教育への言及が、スッポリ抜け落ちている。
子どもたちが誤った性情報を鵜呑みにすることが、不同意性交をはじめとする、密室での性暴力を引き起こすことは珍しくない。いまこそ私たちは性情報リテラシー®やジェンダー、SNS教育に取り組み、日本の性教育を「世界基準」へと変えていく必要がある。
(参照: 性情報リテラシー教育協会)
参考文献
論文:
渡辺真由子「性情報をめぐるデジタル・シティズンシップ教育の展望」The Landscape of Digital Citizenship Education about Sexual Information(『メディア情報リテラシー研究』1(2)、法政大学図書館司書課程、2020年)
著書: